こんにちは。
今回は自然言語処理とは少し違いますが、鈴木祐さんの著書『科学的な適職』をご紹介したいと思います。
本書は、一般的に仕事選びに良いと思われている方法が実はそんなことはなかった、ということから始まり、どうすれば仕事選びを間違えることなく、より幸福度の高い仕事に就くことができるか、について解説しています。
どれも科学的なエビデンスにもとづいており、その中でもはっきりとわかっていること、一番効果が高いと思われることについてのみ解説されているので、非常に説得力があります。
私は今現時点では転職や独立ということはあまり考えていませんが、それでも非常に刺さる内容でしたので、皆さんにもご紹介したいと思います。
では、本書に沿って簡単にご紹介したいと思います。
目次
<ステップ1> 幻想から覚める
ここでは、仕事選びで一般的に良いと考えられていることについて、実はまったく正しくない!ということが「仕事選びにおける7つの大罪」として、データをもとに述べられています。
好きを仕事にする ×
例えば、“好きなことを仕事にする”というのは、色んな人が言っていることであり、確かに好きなことを仕事にするというのは楽しそうなので、非常に説得力があります。
しかし、実はそうでないことは多くの研究でわかっているとのことです。
例えば、2015年のミシガン州立大学による大規模な調査研究では、被験者の仕事観を以下の2つに分けました。
- 適合派:好きなことを仕事にするのが幸せ
給料が安くても満足できる仕事がしたいと答える傾向 - 成長派:仕事は続けるうちに好きになるもの
そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しいと答える傾向」に分けました。
そして、その2組に幸福度・年収・キャリアについて聞くと、適合派の方が満足しているのかと思いきや、なんと適合派の幸福度が高いのは最初だけで、1-5年のスパンで見ると成長派の方がそれらのレベルが高かったそうです。
私も圧倒的に適合派であり、適合派でいることが重要と考えていたので、かなり考えさせられます…。
また、オックスフォード大学の研究では、
- 好きを仕事に派:自分はこの仕事が大好きだ!と考えている
- 情熱派:この仕事で社会に貢献する!と考えている
- 割り切り派:仕事は仕事と割り切る
に分け、スキルと仕事の継続率を調査すると、なんと割り切り派がもっとも優秀だったとのことです。
まだ、他の話もちょこちょこあって、最終的な結論としては、“好きなことを仕事にするよりも、初めは好きなことではなくても、一生懸命取り組むことによりその仕事に情熱が持て、スキルも速くアップする。”ということです。
それはそれでまっとうな気もします。
給料の多さで決める ×
確かに就職時に給料が高い企業を選ぶ、より給料の高い企業に転職する、というのはよくあることだと思います。
実際は私も今4社目ですが、基本的に転職のたびに給料は少しずつ上がっており、そんなにこだわっていないものの給料が上がると嬉しいものです。
しかし、実は給料の多い・少ないは幸福や仕事の満足度とは相関が非常に低いそうです。
給料と幸福度の相関係数は0.15だそうですが、まったくないわけではないものの、それほど高くありません。
それよりも、“仲の良いパートナーとの結婚”や“健康レベルが普通からちょっと体調がいい”になったときの幸福度は、年収上がった場合よりもはるかに良くなります。
また、年収が増えることの影響については、以下の2点が面白いです。
1つ目は、年収が増えたときの幸福度は1年しか続かない、2つ目は年収が400万円ぐらいからどんどん増えていっても満足どはそこまで向上しない、というものです。
1つ目は確かに実感はあるのではないでしょうか。
2つ目はよく聞く話ですね。年収600万円から1000万円になっても、それほど幸福にはならないのでしょう。
ただ、この本でも指摘されていますが、年収が増えることにより幸福度が向上しないわけではない(あくまで向上の仕方が下がるだけ)ので、給料がどうでも良いというわけではなさそうです。
ただ、それよりも仲の良いパートナーと良い関係を築く、仲の良い友人と楽しむ、健康的な生活を送る、といったことの方が幸福度の向上には重要になるということですね。
その他5つの大罪
では、その他5つの大罪について列挙しておきます。
- 業界や職種で選ぶ ×
- 仕事の楽しさで選ぶ ×
- 性格テストで選ぶ ×
- 直観で選ぶ ×
- 適正に合った仕事を求める ×
「業界や職種で選ぶ」というのは、将来成長すると考えられる業界を選んだり、自分の興味がある分野を選ぶことです。
なぜこれが間違っているのかというと、まず1つ目は将来成長するかどうかは誰にもわからないから、ということです。
様々な専門家が将来について予想していますが、それらの予想はほぼ50%ぐらいの確率しか当たっていないからとのことです。
2つ目は、人間の興味は10年間でかなり大きく変化するからです。
ですので、今興味がある!と思っていても10年後にはもっとほかのことに興味を持っていることが多いです。
まぁ、それはそうですよね、という気がします。
なので、「今好きなことをやる」というのはあながち間違っていないのかなとも思います。
他にも「直観で選ぶ」では、直観的に判断するよりも論理的に考える人の方が人生の満足度が高く、日常のストレスも低い、といった研究結果が紹介されていたりします。
<ステップ2> 未来を広げる
では、ここまでで一般的に職業や仕事を選ぶに当たって良いと考えられていることが、実際はそうではないことが説明されてきました。
では、どういった仕事を選べば良いのか?をここから説明しています。
ここでは、仕事の幸福度を決める項目を「7つの徳目」として以下の通り紹介されています。
- 自由
- 達成
- 焦点
- 明確
- 多様
- 仲間
- 貢献
ここでは、個別の詳細については説明しませんが、例えば「自由」については、“不自由な職場はタバコより体に悪い”という研究結果が紹介されています。
他にも労働時間や仕事の場所についても、男女の違いでどう影響するかなどが説明されており、参考になります。
「焦点」では、人間のパーソナリティを「攻撃型」と「防御型」に分け、攻撃型、防御型それぞれに適した仕事のタイプが説明されています。
16個の質問に答えると自分が「攻撃型」か「防御型」かがわかるのですが、私はどうやら「攻撃型」のようです。
そして、その「攻撃型」の人は、進歩や成長を実感しやすい仕事を探すと良いそうです。
確かに、私はそちらの方が合っている気がします。
そして、7つの徳目を使って自分の視野を広げる具体的な方法について解説されています。
私はこれから毎日実践しようと思っています。
<ステップ3> 悪を取り除く
このステップでは悪い職場がどんなものか、その影響はどれぐらいかが解説されています。
「ネガティブはポジティブの600%強い」や「悪い職場は受動喫煙より体に悪い」とのことで、1つの悪い部分が6個の良い部分を帳消しにしてしまうとのことです。
また、悪い職場のワーストランキングは、
- ワークライフバランスの崩壊
- 雇用が不安定
- 長時間労働
- シフトワーク
- 仕事のコントロール権がない
- ソーシャルサポートがない
- 組織内に不公平が多い
- 長時間通勤
だそうです。
日本は比較的雇用は安定しているので、それよりもワークライフバランスや長時間労働は注意した方が良いですね。
私の職場も部署によりますが、長時間労働をしている人は結構いて、すごく疲れているように見えます。
仕事のコントロール権は、やはり自分で考えてやっているという感覚が重要なのかなと思います。
長時間通勤は本当に嫌なものです。
私も在宅ワークになってから、通勤がまったくなくなり、その生活に慣れてしまったので、今更通勤しないといけない環境に戻る気にはなりません。
ただし、これらすべてが存在しないような完璧な会社ばかりではなく、皆がそういった会社に就職できるとは限りません。
ですので、本書ではそれぞれ良いところ悪いところがあることを踏まえて、より良い仕事を選ぶための具体的な方法が解説されています。
<ステップ4> 歪みに気づく
このステップでは、私たちの意思決定力にはバイアスが存在し、そのバイアスのために正しい意思決定ができないという問題に対応する方法が示されています。
ある研究では正しい意思決定を行うためには、綿密なデータ分析よりも脳のバイアスを取り除くプロトコルを決めることの方が600%も重要であるということが分かっているそうです。
適職探しにおいても同じことが言え、「今の時代はフリーな働き方が最高だ」と思い込んだ人はその成功例ばかりを集め同じような考え方をする人とだけ付き合うようになることがあります。
人間にはこういったバイアスというのが存在するため、これを取り除いた意思決定というのが重要になってくるということです。
そのためのバイアス解除方法二つ説明されており、一つ目は時間操作系プロトコルと呼ばれるものもう一つは視点操作型プロトコルと呼ばれるものです。
時間型操作プロトコルというのは、私たちは“未来の予測”がとても苦手なことを解決するために、将来についてできるだけはっきりと思い描き、近視眼的な判断をリセットするというものです。
視点操作型プロトコルというのは、人間は自分のことが一番よく分かっていないという問題を解決するため、第三者の視点で自分の意思決定・行動を観察することにより、自分の意思決定を正しく判断するというものです。
ここでは詳細は割愛しますが興味がある方は本をお手に取ってみてください。
<ステップ5> やりがいを再構築する
このステップでは、今の仕事はそれほど悪くはないけど、あまりやりがいは感じられないという人に向けて、自身の仕事の満足度を上げるための行動計画について説明されています。
一つの提案されている方法は、“ジョブクラフティング”という手法になります。
ジョブクラフティングとは、あまり楽しくなく重要性を感じられないような仕事に対して、改めてその仕事の意味やりがいというのを見出す手法です。
これをすることにより、今やっている仕事のやりがいを一から再定義することができます。
本書ではそのためにやることを、以下の7つのステップに分けて丁寧に解説されています。
- ビフォー・スケッチ
- ビフォー・スケッチの省察
- 動機と嗜好のピックアップ
- 課題クラフティング
- 関係性クラフティング
- 認知クラフティング
- アクション・プラン
そして最後に作ったアクション・プランをもとに、日々の仕事をリノベーションしていくことで、今までなかった「やりがい」を感じることができるようになるでしょう。
まとめ
本書はどれも科学的な効果が認められているもののみが紹介されており、非常に説得力があります。
今、就職をしようとしている人、転職をしようとしてる人、フリーランスになろうとしている人、起業しようとしている人、会社を辞めようとしている人は、本書を読めばより良い仕事につくための参考になる思います。
ここでは、すべてを紹介することはできていませんので、より詳細については本書をお手元に取っていただければと思います。